【事例】収入の意図的な操作による婚姻費用減額への対応

前回のコラム「収入の変動見込みと婚姻費用・養育費」で、
収入は婚姻費用(・養育費)を決める重要な要素と説明しました。

今回は、原則として現在の収入で計算するべきとされている婚姻費用を
「減収したのは意図的な操作であるとして、
減収前の収入で婚姻費用を計算する」とした事例をご紹介します。

状況

申立人(妻側)が別居を開始し、婚姻費用分担請求をしたところ、
同月に、相手方(夫側)の父親が、自己の経営する会社の役員である息子の
役員報酬を半分以下(約1060万円 → 約460万円)にした。

妻が子ども1人、夫が子ども1人を監護している。

減収前の収入1060万円で算定方式に当てはめると、月額14万円となり、
減収後の収入460万円で算定方式に当てはめると、月額6万円となる。

相手方(と相手方の父親)の主張

2年前に息子が住宅を購入する際に、高額なローンを組むなどの理由
私(相手方の父親)の役員報酬を息子(相手方)に回して役員報酬を上げていた
しかし、離婚するということで、上げていた役員報酬を元に戻した。

月額22万円を住宅ローンの返済に充てている。
現在の月の手取り額、約30万円では、
ローンに加え、高額の婚姻費用を支払えばとても生活できない。

申立人(の代理人弁護士)の対応

1.審判への移行

調停は不調で終わり、審判への移行を申し立てました。

2.証拠資料の収集

弁護士会照会を利用して、
相手方の過去8年間の年収に関する資料を入手し、

1年前の年収が約1060万円
2年前の年収が約1060万円
3年前の年収が約1030万円
4年前の年収が約1000万円
5年前の年収が約1000万円
6年前の年収が約1000万円
7年前の年収が約1000万円
8年前の年収が約1000万円

であったことが判明しました。
これは2年前に、住宅ローンを組むために
役員報酬を上げていたことと矛盾していました。

※注意

この事案では弁護士会照会によって相手方の年収に関する資料を入手できましたが、
弁護士会照会を利用すれば、必ず入手できるということではありません。

3.理論的根拠の模索

審判例(那覇家庭裁判所 平成16年9月21日)をもとに理論を構築しました。

【審判例の内容】
医療法人を経営する夫と、その医療法人の理事を務める妻が別居し、
別居とともに妻が理事を退任したことで、専従者給与が支払われなくなった。
妻が受け取っていた専従者給与相当額は、医療法人に帰属することになる。

この場合、医療法人に帰属することになった専従者給与相当額も
夫の収入に加えるべきかが争われた。

結果、医療法人の財産が、最終的に夫が取得する可能性が高いことを考慮し、
妻が理事を退任するまでに支給されていた専従者給与相当額を夫の収入に加算した。

【申立人側の理論】
今回の事案では、減らした役員報酬相当額は会社に帰属することになり、
最終的には、跡取りである息子(相手方)がその分のお金を貰うことになる

審判の内容

婚姻費用は月額14万円とされました。
(昨年の年収である約1060万円で算定されました。)

【主な理由】
1.調停を申し立てた月から収入を半分に下げたのは、収入の意図的な操作である。
2.ローンを組むなどのために収入を上げていたという相手方の供述は信用できない。
3.減らした役員報酬相当額が最終的には、相手方に帰属する。

まとめ

婚姻費用は、原則として現在の収入で計算するべきとされていますが、
場合によっては、別の条件で計算することもあります。

婚姻費用はこれらのページでも解説しています。

当事務所では初回相談料を無料とさせていただいていますので、
婚姻費用について不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

 

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