婚姻費用・養育費を決めるときに、収入は重要な要素になります。
では、今後の収入が変動する見込みがある場合はどうなるのでしょうか。
離婚調停の中で、減収の見込みがあるとして
養育費の減額を主張された例をもとに解説していきます。
調停の状況
親権者
○:母親にすることで夫も納得(0歳児の息子1人)
慰謝料
○:相応の金額で納得
養育費
×:まとまらず
養育費の双方の主張
妻側
・昨年の年収
夫・・・530万円
妻・・・0円
・0~14歳の子供、1人
これを算定方式に当てはめると、月額5万8000円となる。
夫側
今年から管理職となった。
そのため、夜勤手当などが支給対象外となり、月給が減少した。
また、不況のため賞与も減額の予定である。
これらの理由により、今年の年収は430万円程度になる見込みである。
これを算定方式に当てはめると、月額4万8000円となる。
裁判例【東京高等裁判所決定 平成21年9月28日】
過去の裁判例に本件の内容と似ており、その判決をもとに調停を進めた。
【本件との類似点】
・昇格によって夜勤手当などが支給対象外となった
・賞与が減少した
・今までの給与が毎年増額している
・管理職に昇格している
【裁判例の判決内容】
昇格したことにより超過勤務手当が対象外になったこと、賞与が減少したことは認められる。
しかし、収入が毎年増加していること、ベース月給額が増加していることを夫も認めていること、
課長職に昇格していることにも照らすと、昨年より減収するのか、
減収するとしていくら減収するのかは予測が困難であって、
翌年の年収額を推測することはできないから、今年の年収に基づいて算定するほかない。
調停成立
裁判例から本件のような減収の見込みから、養育費の減額が認められることは難しいです。
しかし、妻側が審判や訴訟になることを望んでいなかったため、
2年前・去年・今年の見込みの年収の平均値である500万円を算定方式に当てはめた
月額5万5000円の養育費で調停が成立しました。
まとめ
収入は婚姻費用・養育費を決める重要な要素です。
ただ、収入が増減する見込みが認められるには、
客観的に見て、収入の増減の見込みに明らかな証拠がある場合に限られます。
本件のように調停で成立するのであれば、
夫側からすると、わずかながらの減額ができていますし、
妻側からすると、算定方式に基づいた金額に近い養育費を受け取ることができます。
婚姻費用・養育費の請求をする、または請求されたときには収入の増減の見込みや
養育費・婚姻費用の増減額事由がないかの確認をしておきましょう。
当事務所では初回相談料を無料とさせていただいていますので、
養育費・婚姻費用について不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。