無職の場合の婚姻費用・養育費の算定 ~潜在的稼働能力の考え方~

収入は婚姻費用・養育費を決める重要な要素ですが、
夫婦のどちらか一方、もしくは両方が無職または
不当に低収入である場合はどう算定すればよいのでしょうか。

このような場合の婚姻費用・養育費は、潜在的稼働能力に基づいて検討します。

潜在的稼働能力の判断

現在、無職であったり、不当に低収入である人が
本来、どの程度の収入を得ることができるのか(潜在的稼働能力)を
判断する最も一般的な基準に賃金センサス(※1)があります。

しかし、潜在的稼働能力はその人の就労歴や健康状態、
子の年齢やその健康状態など諸般の事情を総合的に検討すべきとした
審判例(後述:大阪高等裁判所 平成20年10月8日)もあり、

賃金センサスに当てはめれば、婚姻費用・養育費を
算出するための収入が決定するという訳ではありません。

では、実際の裁判所は潜在的稼働能力に関して、どのような判断をしているのでしょうか。
ここでは、3つの審判例・裁判例をご紹介します。

※1:賃金センサス
厚生労働省が行っている「賃金構造基本統計調査」のこと。
主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を
労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、
勤続年数、経験年数別等に明らかにするために行われている。

例えば、男性・中卒・25-29歳は
平成27年の賃金センサスを適応すると年収は325万6400円となる。

未成熟子がいるケースの潜在的稼働能力(大阪高等裁判所 平成20年10月8日)

夫(抗告人)側は、長男を幼稚園、長女を保育園に預けていることから
妻(相手方)は就業が可能で年収125万円程度の潜在的稼働能力が
あるものとすべきと主張していました。

【審判の内容】

潜在的稼働能力を判断するには、母親の就労歴や健康状態、
子の年齢やその健康状態など諸般の事情を総合的に検討すべきところ、
本件では、相手方は過去に就労歴はあるものの、
婚姻してからは主婦専業であった者で、別居してからの期間は短いうえ、
子らを幼稚園、保育園に預けるに至ったとはいえ、その送迎があり、
子らの年齢が幼いこともあって、いつ病気、事故等の予測できない事態が発生するかも知れず、
就職のための時間的余裕は必ずしも確保されているとはいい難く
現時点で相手方に稼働能力が存在することを前提とすべきとの抗告人の
(年収125万円程度の潜在的稼働能力があるものとすべきという)主張は採用できない

賃金センサスよりも低賃金で稼働しているケース1(東京家庭裁判所 平成22年11月24日)

申立人(夫)が、相手方(妻)は大学院卒の学歴を有し、
大学の非常勤講師として年収84万円がある。
申立人は、相手方はより多額の収入を得るための努力をするべきであり、
賃金センサスによれば、少なくとも375万円の年収を得ることが期待できることから
婚姻費用分担金の額は、実収入を前提すべきではないと主張していました。

【審判の内容】

確かに、相手方の学歴からすれば、相手方が現在よりも
高収入の職に就くことのできる可能性が相当程度認められ、
年少の子を養育しているなど、その求職活動を妨げる事情は特に見あたらない。
しかし、相手方は、現にその学歴等を生かして大学の非常勤講師として
稼働しているのであるから、その潜在的稼働能力に従った努力を怠っているとは言い難く
本件において、相手方の収入について、実収入ではなく、
賃金センサス等に基づく統計値を用いるべき事情は特に認められない

賃金センサスよりも低賃金で稼働しているケース2(大阪高等裁判所 平成22年3月3日)

相手方(夫)が調停にて月額6万円で同意していた婚姻費用について
約9か月後に収入が減ったとして婚姻費用の減額を請求した事例です。

【判決の内容】

調停において合意した婚姻費用の分担額について、その変更を求めるには、
それが当事者の自由な意思に基づいてされた合意であることからすると、
合意当時予想できなかった重大な事情変更が生じた場合など、分担額の変更を
やむを得ないものとする事情の変更が必要である。
そこで、本件についてこれをみるに、前記認定のとおり、相手方は前件調停が成立してから
6か月後に就職先を退職し、大学の研究生として勤務して収入を得る状況となっており、
平成21年の収入は合計399万7890円となり、前件調停成立時に比して
約3割減少していることを認めることができる。
相手方は、退職の理由について、人事の都合でやむを得なかった旨主張するが、
実際にやむを得なかったか否かはこれを明らかにする証拠がない上、
仮に退職がやむを得なかったとしても、その年齢、資格、経験等からみて、
(前職の収入と)同程度の収入を得る稼働能力はあるものと認めることができる。
そうすると、相手方が大学の研究生として勤務しているのは、
自らの意思で低い収入に甘んじていることとなり、
その収入を生活保持義務である婚姻費用分担額算定のための収入とすることはできない

まとめ

ご紹介した審判例・裁判例のように、潜在的稼働能力の
判断には様々な事情を検討する必要があります。
退職したなどの理由で、婚姻費用・養育費の金額について、
まとまらないなど婚姻費用・養育費について悩みがありましたら
当事務所では初回相談料を無料とさせていただいていますので、お気軽にご相談ください。

 

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