婚約破棄に対する慰謝料の請求をする際には、
「婚約が成立していたこと」「婚約を不当破棄されたこと」が重要になります。
どのような場合に、婚約の「成立」「不当破棄」と判断されるのか
2件の事例を参考にして考えていきましょう。
事例を見る前に(婚約の成立要件)
婚約が成立していたと判断されるには以下のような事情を考慮して判断されます。
- 明確な合意
- 婚約指輪の交付
- 結納
- 両親・親族への婚姻のあいさつ
- 結婚式場の予約
事例を見る前に(婚約破棄の正当な理由)
婚約を破棄された側に、以下のような原因がある場合は
婚約破棄の正当な理由があるとして、不当破棄とは認められないと判断されます。
- 婚約者以外の異性関係があった
- 重要な事情について嘘を言っていた
- 性的不能を隠していた
- 回復不能な病気になった
- 経済状態が日常生活に支障が出るほどに悪化した
- 暴力(言葉の暴力を含む)を振るった
他にも、婚約解消に至った双方の行為態様や
婚姻によって形成された関係、同棲をしていたかなども判断要素となります。
【事例1】婚約の成立は認められたが、不当破棄とならなかったケース
婚約解消・慰謝料請求に至った経緯
交際開始から1か月経った頃、女性が男性の自宅に住む形で同棲を開始
同棲開始から約1週間後、口論となり交際を解消して別居
その後、女性が男性に対して婚約破棄を理由に慰謝料を請求
女性の主な主張
・男性から積極的に交際を求め、退職して同居するように促していた
・「結婚したい」「子供が欲しい」といった内容のメールのやりとりをしていた
・女性の母親に会っていた
男性の主な主張
・指輪の交付、式場の予約などをしていない
・「結婚したい」といった内容のメールは、一般的に交際していればよくあること
・女性の母親に会っているが、結婚の挨拶をしたわけではない
裁判所の判断
・以下の事情からすると、明確な合意の証拠は無いものの、
両者の間には婚約が成立していたと認められる
1.男性から積極的に、結婚を希望する内容のメールを送っていた
2.女性の母親に会い、「父親にも会いたい」と話していた
3.女性から「今年中に入籍したい」を言われたことに対し、反対する言動をしていない
4.女性から禁煙を希望され、「2人の将来のためにやめる」という話をしていた
・男性は、婚約の成立には指輪の交付や式場の予約などの事情が必要と主張するが、
昨今においては、必ずしもこれらの儀式を挙行するものではない
・だだし、不当破棄は認められず、請求は棄却
【事例2】婚約の成立が認められ、80万円で和解が成立したケース
婚約解消・慰謝料請求に至った経緯
交際開始から2か月後、女性の妊娠が発覚
男性・女性ともに未成年ということもあり、双方の両親同席の下で話し合いを行う
妊娠発覚から5か月が経った頃、関係が悪化して、男性から交際を解消
その後、女性が男性に対して婚約破棄を理由に慰謝料を請求
女性の主な主張
・双方の両親同席の下で話し合いをしている
・妊娠発覚後に、男性が指輪を渡している
男性の主な主張
・家族同席で話し合いをしただけで、明確な合意の証拠がない
・妊娠発覚から交際解消までの間、入籍の話もなく、結婚に向けた具体的な事情が無い
・指輪の交付はあるが、8,000円のものであり、婚約指輪とは言えない
裁判所の判断
・以下の事情から、裁判官の心証として、婚約が成立していたものと考えている
1.婚姻する意思がないのであれば、妊娠がわかってから5か月間も、交際を継続するとは考えにくい
2.正式な婚約指輪とは言えなくとも、妊娠がわかった後に指輪を渡している
・ただし、両者の年齢や、交際の経緯からすると、慰謝料の金額としては80万円程度を考えている
まとめ
ご覧いただいた事例からわかるように「婚約指輪の交付がない」「結婚式場の予約をしていない」
といった具体的な理由でなくとも、様々な事情を考慮して婚約が成立していたのかが判断されます。
一方的に交際を解消されたとしても、泣き寝入りするのではなく、慰謝料の請求を視野に入れて、
婚約が「成立していたのか」「不当破棄されたのか」を考えてみましょう。
当事務所では初回相談料を無料とさせていただいていますので、
婚約の不当破棄などでお悩みでしたらお気軽にご相談ください。