実例と合わせてみる親権者の判断基準【フレンドリーペアレントルール】

親権・監護権について】のページにて『親権者の判断基準』をご紹介しています。
今回は、その中の「面会交流についての考え方」について裁判例・審判例を交えて解説します。

フレンドリーペアレントルールとは

フレンドリーペアレントルールとは、他方の親と
友好的(フレンドリー)な関係を取ろうとしている親の方が、
親権者として適格であると判断するという考え方(判断基準の1つ)です。

では、どういったことが友好的な関係を取ろうとしているのかというと、

最も一般的なのが、親権者(監護者)となったときに
他方の親の面会交流について寛容である場合です。
この他にも、他方の親の悪口を子どもに言ったりしていないかなども該当します。

フレンドリーペアレントルールが注目された裁判

フレンドリーペアレントルールが注目された裁判
(千葉家庭裁判所松戸支部 平成28年3月29日)があります、

この裁判では、長女を、約5年10か月間(平成22年5月22日から)監護をしていた母親ではなく、
年間100日にも及ぶ面会交流の計画を提示した父親が親権者と指定され、
大きなニュースとなりました。

しかし、控訴審(東京高等裁判所 平成29年1月26日)では逆転して、
母親が親権者と指定されました。
上告についても、最高裁判所は平成29年7月12日付で退け、長女の親権者は母親で確定しました。

これらの裁判の判決文は公的機関(裁判所のホームページなど)には掲載されていませんが、
第1審(千葉家家庭裁判所松戸支部 平成28年3月29日)の判決文については
公開している団体がありますので、気になる方は「フレンドリーペアレントルール 判決
などのワードで検索してみてください。

親権者の判断基準まとめ

※1
母による監護開始以後、面会交流は6回のみで、最後の面会交流は平成22年9月26日。
(離婚後片親と会えなくなる子どもの現状を特集した番組で、父側が提供した
長女の映像が放映されたことにショックを受け、母側が面会交流を拒むようになった。)

東京高等裁判所の判断(一部)

  • 面会交流について

どの程度の頻度でどのような態様により相手方に子との面会交流を認める意向を
有しているかは、親権者を定めるに当たり総合的に考慮すべき事情の一つであるが、
父母の離婚後の非監護親との面会交流だけで子の健全な成育や子の利益が
確保されるわけではないから、父母の面会交流についての意向だけで親権者を
定めることは相当でなく、また、父母の面会交流についての意向が他の諸事情より
重要性が高いともいえない

妻宅と夫宅とは片道2時間半程度離れた距離関係にあり、現在小学校3年生の長女が
年間100日の面会交流のたびに夫宅と妻宅とを往復するとすれば、身体への負担のほか、
学校行事への参加、学校や近所の友達との交流等にも支障が生ずるおそれがあり
必ずしも長女の健全な成育にとって利益になるとは限らない

  • 子の意思について

長女(当時小学校3年生)は、妻と一緒に暮らしたいとの意向を示した。
長女は、妻と夫との別居後、一貫して妻と共に暮らしているから、
長女の上記意向には妻の影響が及んでいるものと推認されるが、
それでも今後も妻と一緒に暮らしたいということが
長女の意思に反するものであることをうかがわせる事情は見当たらない

  • 結論

長女の現在の監護養育状況にその健全な成育上大きな問題はなく、
長女の利益の観点からみて長女に転居及び転校をさせて
現在の監護養育環境を変更しなければならないような
必要性があるとの事情は見当たらないことも総合的に勘案し、
長女の利益を最も優先して考慮すれば、長女の親権者は妻と定めるのが相当である。

面会交流を認めない母親から父親へ引渡しを認めた審判

※ 相手方:母  申立人:父

未成年者は、まだ7歳であり、安定的に母子関係を形成することが
重要であることからすると、相手方と未成年者を分離させることには問題がある

「未成年者は、(中略)学校生活には慣れつつある。仮に、未成年者が申立人宅に
居住することになると、転校を余儀なくされ、学校生活の継続性が失われることとなる。

(中略)

説示したことを十分考慮し、かつ、現在の監護環境の変更に伴って生じる未成年者の
負担を鑑みてもなお、相手方を未成年者の監護者と指定し、相手方において引き続き
未成年者の監護養育を行うことよりも、未成年者の監護者については、申立人と定めて
その下において養育させるのが未成年者の福祉にかなうものと認められる。

裁判所は、上記のように監護者を母親から父親へ変更した際の子どもへの
負担や影響を考慮したうえで、父親を監護者と指定しました。

この判断には、「面会交流についての考え方」が重視されています。

相手方は、申立人と未成年者とが面接交渉をすることについて反対の意思を有しており、
本件申立て以後においても、未成年者の通院等の手続についても申立人の
協力を拒むなどした。
相手方のかかる態度については、申立人と未成年者との交流を妨げる結果となっており、
未成年者が社会性を拡大し、男性性を取得するなどの健全な発育ないし成長に対する
不安定要素となっている。

こちらの審判も公的機関(裁判所のホームページなど)には掲載されていませんが、
公開している団体がありますので、気になる方は「東京家庭裁判所八王子支部 平成21年1月22日
などのワードで検索してみてください。

親権者の判断基準まとめ

※1
深夜、未成年者を置いて家を空け、子どもが母親を捜して近所を徘徊し、
警察に保護されたことがあった。

まとめ

【フレンドリーペアレントルールが注目された裁判】では、最終的には
より面会交流について寛容であった父親ではなく母親が親権者となりましたが、
【面会交流を認めない母親から父親へ引渡しを認めた審判】と比較してみると、
前者は、父親との面会交流を「月1回、2時間程度」としており、
後者は、父親との面会交流について「反対の意思を表明」しているという違いがあります。

子の健全な成長には、両親との継続的な接触が望ましいと考えられているため、
子の利益に反する理由(DVなど)がない限りは面会交流ができるように努めるべきだからです。

そのため、面会交流を全く認めないことは子の利益を損なう行為となり、
親権・監護権の獲得に不利になってしまいます。

【民法766条第1項】
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及び
その他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、
その協議で定める。
この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない

当事務所では初回相談料を無料とさせていただいていますので、親権・監護権を獲得したい方や、
子どもとの面会交流でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

 

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