【判例】子の引渡しの間接強制を「権利の濫用」とした

先日(2019年4月)、子の引渡しの強制執行(間接強制)に関する最高裁判所の判決がありました。

この裁判は、子ども3人を連れて別居した父から、母への子の引渡しを命ずる審判を
債務名義として間接強制の申立てをした事案で、最高裁判所はこの間接強制の申立ては
「権利の濫用」に当たると判断しました。

ただし、間接強制が事情もなく「権利の濫用」に当たるわけではありません。
では、どのような事情のときに「権利の濫用」に当たるのか、裁判までの経緯を
確認していきましょう。

【概要・時系列】

※1

妻が夫へ「死にたいいやや。こどもらもすてたい。」という内容のメールを
送信したことを契機に実家に転居した。
長男(7歳8か月)、二男(5歳2か月)、長女(2歳8か月)の3人。

※2

泣きじゃくり、呼吸困難に陥りそうになった。
執行官は「執行を続けると長男の心身に重大な悪影響を及ぼすおそれがある」と判断。

※3

原審(大阪高等裁判所)
夫に対し、長男を妻に引き渡すよう命ずるとともに、これを履行しないときは
1日につき1万円の割合による金員を妻に支払うよう命ずる間接強制決定をすべきものとした。

最高裁判所の見解(判決文より抜粋)

子の引渡しを命ずる審判は、(中略)一方の親の監護下にある子を他方の親の監護下に
置くことが子の利益にかなうと判断し、当該子を当該他方の親の監護下に移すよう
命ずるものであり、(中略)子の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ、
合理的に必要と考えられる行為を行って、子の引渡しを実現しなければならないものである。
このことは、子が引き渡されることを望まない場合であっても異ならない
したがって、子の引渡しを命ずる審判がされた場合、当該子が債権者に引き渡されることを
拒絶する意思を表明していることは、直ちに当該審判を債務名義とする間接強制決定を
することを妨げる理由となるものではない
しかしながら、(中略)引き渡されることを拒絶して呼吸困難に陥りそうになったため、
執行を続けるとその心身に重大な悪影響を及ぼすおそれがあるとして執行不能とされた。
(中略)人身保護請求は、長男が抗告人等の影響を受けたものではなく自由意思に基づいて
抗告人等のもとにとどまっているとして棄却された。
以上の経過からすれば、現時点において、長男の心身に有害な影響を及ぼすことのないよう
配慮しつつ長男の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる抗告人の行為は、
具体的に想定することが困難というべきである。このような事情の下において、本件審判を
債務名義とする間接強制決定により、抗告人に対して金銭の支払を命じて心理的に
圧迫することによって長男の引渡しを強制することは、過酷な執行として許されないと解される。
そうすると、このような決定を求める本件申立ては、権利の濫用に当たるというほかない。

※:全文は裁判所のホームページからご覧いただけます。

まとめ

今回、最高裁判所は

  • 直接強制が、子の心身に悪影響を及ぼすと判断され不能となった
  • 子の自由意思で現監護親との生活を望んでいるため、
    拘束に当たらないとして人身保護請求が棄却された

の2点から子の引渡しの間接強制が「権利の濫用」に当たると判断しました。

また、判決文には、

間接強制の申立てを受けた執行裁判所は、提出された債務名義に表示された義務について
その履行の有無や履行の可否など実体的な事項を審査することはなく、当該義務の履行が
あったことや当該義務が履行不能であることなどを理由として申立てを却下することは
できないのが原則である。
(中略)
本件は、間接強制決定が過酷執行として許されないことが、間接強制の申立てに先行する
手続における裁判機関等の判断により明白になっているといえる事案であって、
このような場合には、執行裁判所は、例外的にそうした事情を考慮して間接強制の申立てを
却下すべきであり、このように解したとしても、執行手続の迅速性を害することはないと
考える。

との補足意見もあり、今後、同様の事情のある間接強制の申立ては
執行裁判所に却下される場合が出てくるでしょう。

子どもの親権・監護権や引渡しについてお困りでしたら、
当事務所では初回相談料を無料とさせていただいていますので、お気軽にご相談ください。

関連ページ

 

無料相談ご予約・お問い合わせ

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー