面会交流の間接強制:判断基準と裁判例比較

はじめに

面会交流に関する紛争が生じた場合、裁判所で審判(即時抗告等がされた場合は決定)が行われ、その実施に関して様々な法的判断が下されます。しかし、監護親が面会交流を拒否するケースも少なくありません。そのような場合、裁判所の手続きを利用して面会交流を実現する方法の一つとして、「間接強制」があります。本コラムでは、面会交流における間接強制について、その法的意義や特徴、具体的な裁判例を比較検討しながら、どのような場合に間接強制が認められるのか、その判断のポイントを解説します。

間接強制とは

間接強制の法的意義

間接強制とは、債務者が債務を履行しない場合に、その債務の不履行を続けると一定の金銭(間接強制金)を支払わなければならないとすることで、心理的な圧迫を加えて、債務者に債務の履行を促す制度です。つまり、「もし約束を守らなければ、お金を支払わなければならない」という形で、債務者に約束を守るよう促す仕組みといえます。この制度は民事執行法第172条に規定されており、面会交流に限らず、金銭の支払い以外の債務の履行を確保するための手段として活用されています。

面会交流における間接強制の特徴

面会交流の場面における間接強制は、他の債務とは異なる特徴を持っています。それは、子どもの福祉や意思が重要な考慮要素となる点です。また、監護親の行為だけでなく、子どもの協力も必要となることから、監護親の意思のみで履行が可能かどうかが重要な判断ポイントとなります。さらに、面会交流を命じる審判において、面会交流の日時や頻度、時間の長さ、子どもの引渡しの方法などが具体的に定められているかどうかも、間接強制の可否を判断する上で重要な要素となっています。

面会交流の間接強制に関する裁判例

間接強制が認められた事例(平成25年3月28日最高裁第一小法廷決定・平成24年(許)第48号)

この事案では、6歳の子どもについて、家庭裁判所の面会交流実施要領に従った面会交流を命じる審判が確定していましたが、監護親が「子どもが面会交流に応じない」として面会交流を認めなかったため、非監護親が間接強制を申し立てたものです。

最高裁は、「監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は、上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。」と判示しました。また、「子の面会交流に係る審判は、子の心情等を踏まえた上でされている」として、間接強制を認めました。

間接強制が認められなかった事例①(平成25年3月28日最高裁第一小法廷決定・平成24年(許)第47号)

同じく平成25年3月28日の最高裁第一小法廷決定・平成24年(許)第47号では、8歳と4歳の子どもに関する面会交流調停が成立していたものの、その調停調書において、面会交流の大枠のみが定められ、具体的な内容は当事者間の協議に委ねられていた点が問題となりました。決定文からは、「非監護親と監護親との間で非監護親と子が面会交流をすることを定める調停が成立した場合において、調停調書に面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえるときは、間接強制を許さない旨の合意が存在するなどの特段の事情がない限り、上記調停調書に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。」との見解が示され、本件では監護親がすべき給付が十分に特定されているとはいえないため、間接強制が認められませんでした。この決定により、面会交流の内容の特定性が間接強制の重要な判断要素であることが明確になりました。

上記2件の面会交流要領と面会交流調停条項については後述する「給付の特定性について」でご紹介します。

間接強制が認められなかった事例②(平成29年4月28日大阪高裁決定)

本件では、15歳の子どもが家庭裁判所調査官による意向調査で面会交流を拒否する意思を明確に表明していた事案について判断がなされました。大阪高裁は、「間接強制をするためには、債務者(※監護親)の意思のみによって債務(※面会交流)を履行することができる場合であることが必要」と指摘しました。

そして、幼児の場合は監護親の意思のみで面会交流場所への同行が可能であるのに対し、15歳という年齢の場合は子どもの協力が不可欠であると判断しました。さらに、高校生である子どもの精神的成熟度を考慮し、面会交流を強制することは子どもの判断能力や人格を否定することになり、子どもの福祉に反するとして、間接強制を認めませんでした。これにより、子どもの意向が重要な判断材料であることが分かります。

間接強制が認められなかった事例③(令和2年3月18日名古屋高裁決定)

本件は、面会交流を命ずる高等裁判所の決定時に11歳10か月だった子どもが、間接強制の申立て時には15歳に達しており、面会交流に対して拒否感を示していた事案です。名古屋高裁は、「面会交流を命ずる審判の後に年数が経過して、子の成長の段階が、上記審判が判断の基礎とし、想定した子の成長の段階と異なるに至った」場合があることを指摘しました。

そして、このような場合において、子どもが非監護親との面会交流を拒絶する意思を示していることは、審判に基づく間接強制決定を妨げる理由になると判示しました。この決定は、子どもの成長に伴う状況の変化と、それに応じた子どもの意思の尊重の必要性を示した重要な事例といえます。

面会交流の間接強制における判断のポイント

給付の特定性について

面会交流の間接強制が認められるためには、面会交流の日時、頻度、時間の長さ、子どもの引渡方法等が具体的に定められている必要があります。この点について、平成24年(許)第48号と平成24年(許)第47号の面会交流要領を比較すると、以下のような違いが表れています。

平成24年(許)第48号では、面会交流の具体的内容が明確に特定されていました。具体的には、

  • ①実施日時
    月1回、毎月第2土曜日の午前10時から午後4時まで
  • ②交流場所
    非監護親自宅以外の非監護親が定めた場所
  • ③子どもの受渡場所
    当事者間で協議して定めるが、協議が調わないときは●●駅改札付近
  • ④やむを得ない事情で実施できない場合
    子どもの福祉を考慮して代替日を決める
  • ⑤学校行事への参列
    入学式,卒業式,運動会等の学校行事(父兄参観日を除く。)に参列することを妨げてはならない

について明確な取決めがなされていました。

一方、平成24年(許)第47号では、多くの事項が当事者間の協議に委ねられていました。例えば、

  • ①(8歳の子どもとの)実施頻度
    2ヶ月に1回程度(幅のある表現)、原則として第3土曜日の翌日
  • ②(8歳の子どもとの)交流時間
    「半日程度(午前11時から午後5時まで)」としながら「最初は1時間程度から始め、徐々に延ばす」という不確定な内容となってた。
  • ③(8歳の子どもとの)子どもの受渡場所及び交流場所
    受渡場所は特定の喫茶店が指定されているものの、面会交流の具体的な日時、場所、方法等は協議して定めるとされていた。
  • ④(4歳の子ども)との面会交流
    将来的な面会交流の実施を目標とすることが示されているのみで、具体的な内容は全く定められていなかった。

というような内容の取り決めがされていました。

このような両者の比較から、間接強制が認められるためには、当事者間の協議に委ねられる部分を最小限に抑え、実施条件を可能な限り具体的に特定することが重要であることが分かります。特に、実施日時、場所、時間、引渡方法等の基本的な事項については、明確な定めが必要となります。また、やむを得ない事情が生じた場合の対応方法についても、具体的な手順が示されていることが望ましいといえます。

このような特定性の要件は、監護親の義務の範囲を明確にし、履行の確保を図るとともに、子どもの福祉にも資するものとして重要な意味を持っています。面会交流の取決めを行う際には、これらの裁判例を参考に、できる限り具体的な内容を定めることが、将来の円滑な実施のために有効であると考えられます。

なお、当事務所で扱った事例でも、面会交流の日時や時間は具体的に定められていたものの、子どもの引渡場所について「実施場所において引き渡す」とされ、その実施場所自体が「当事者間で話し合いにより定める」とされていたケースがありました。この事例では、実際に親同士の事前の話し合いにより、面会交流の実施場所がその都度、様々な場所で実施されていました。しかし、裁判所は「子の引渡し方法(引渡場所)について、当事者間で協議することとされているにとどまり、監護親がすべき給付が十分に特定されているということはできない」として、間接強制を認めませんでした。

また、当事務所で扱った別の事例では、上述の最高裁判例を考慮した、間接強制を見越した審判が下されました。この審判では、子どもの引渡方法について、まず原則的な引渡場所を具体的に指定しつつ、「監護親が指定場所まで子どもを連れて引き渡すことができない旨を非監護親に連絡したときは、監護親の自宅で引き渡す」という予備的な定めが設けられました。また、面会交流の実施場所についても、「○○公園で実施する。ただし、荒天時は△△で実施する」という形で、予備的な場所が明示されました。このように、話し合いを要する部分を最小限に抑え、様々な状況に対応できる予備的な定めを設けることで、監護親が一人で履行できる内容となり、面会交流が実施されない場合に「間接強制を認める」と判断される可能性の高い審判となっています。

「予備的な定め」の重要性

面会交流の条件を決める際、「間接強制を見越す場合」は、条件を具体的に特定し、1つに決められない事項については「予備的な定め」もしっかり決めておく必要があります。一方、柔軟な運用を重視する場合は、「話し合いで決める」という方法を採用することもできますが、その場合は間接強制による履行確保が困難になることに留意が必要です。

「予備的な定め」というのは、親同士の話し合いが整わない場合に適用される、代わりの具体的な決まりのことです。例えば、子どもの引渡場所について「話し合いで決める」とする場合、「話し合いがまとまらないときは○○駅の改札付近とする」という形で、予備的な場所を決めておくことを意味します。

面会交流をめぐって争いが生じている親同士の場合、将来的に関係がさらに悪化して、話し合いがまったくできなくなる可能性があります。そのような状況になった時、もし予備的な定めがなければ、監護親は「どこで子どもを引き渡せばよいのか」が分からなくなってしまいます。

間接強制という制度は、監護親が「一人で」守ることができる約束でなければ機能しません。非監護親との協議が必要な約束では、非監護親が協力してくれない場合に守ることができないため、間接強制にはなじまないのです。

間接強制が認められた例(平成24年(許)第48号)を見ると、「子どもの受渡場所は、当事者間で話し合いにより定めるが、話し合いが調わないときは、○○駅東口改札付近とする」という定め方がされています。

この定め方であれば、親同士が協力して話し合いができる間は柔軟に場所を決められ、話し合いができなくなった場合でも、監護親は一人で「○○駅東口改札付近」に子どもを連れて行けば義務を果たせます。

一方、間接強制が認められなかった例では、「引渡場所は、当事者間で話し合いにより定める」のみとなっていました。

この定め方では、話し合いができなくなった場合、監護親は「どこに」子どもを連れて行けばよいのか分からなくなります。そのため、監護親が一人で守れる約束とはいえず、間接強制が認められません。

このように、同じ「話し合いで決める」という方法でも、予備的な定めがあるかないかで、間接強制ができるかどうかが大きく変わってくるのです。

間接強制を可能にするために大切なこと

最高裁判所の判例によれば、面会交流について間接強制を可能にするためには、以下の3つの事項が具体的に決まっている必要があります。

  • ①いつ会うかを具体的に決める
    「月に1回」というだけでは不十分です。「毎月第2土曜日」というように、具体的に決める必要があります。「2か月に1回程度」のように幅のある表現では、間接強制が認められない可能性があります。
  • ②何時間会うかをはっきり決める
    「半日程度」といった曖昧な表現では不十分です。「6時間」や「午前10時から午後4時まで」というように、時間の長さを明確にする必要があります。
  • ③どこで子どもを引き渡すかを決める
    引渡場所についても具体的に決める必要があります。特に重要なのは、もし「話し合いで決める」という方法を採用する場合は、必ず「話し合いがまとまらない時は○○」という予備的な定めも一緒に決めることです。

予備的な定めがないと、話し合いができなくなったときに監護親が何をすべきか分からなくなり、間接強制が認められません。

これら3つの事項のうち、1つでも具体的に決まっていないと、間接強制は認められないと思っていたほうがよいでしょう。調停や審判で面会交流の取決めをする際には、将来の執行の可能性も見据えて、これらの点を具体的に決めておくことが重要です。

もし現在の取決めがこれらの条件を満たしているか不安な場合や、これから面会交流の取決めをする場合には、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

子どもの年齢と意思の考慮について

裁判例を見ると、子どもの年齢と意思が間接強制の可否を判断する上で極めて重要な要素となっていることがわかります。特に、幼児期と比べて意思表示が明確になる15歳以上の子どもについては、その意思を尊重する傾向が強くなっています。これは、令和2年3月18日名古屋高裁決定で「子の監護に関する処分の審判をする場合には,子が満15歳以上であるときは,子の陳述を聴かなければならないとされていること(家事事件手続法152条2項)」と言及されていることからも分かります。

また、子どもの成長に伴う状況の変化も重要な考慮要素とされ、以前の審判時には想定されていなかった子どもの成長による変化が生じた場合には、それを踏まえた新たな判断がなされる可能性があります。さらに、子どもの福祉の観点から、面会交流を強制することが適切かどうかについても慎重な判断が求められています。

なお、子どもへの心理的な負担が大きい場合や不適切な環境での面会交流といった、面会交流の目的が子どもの福祉に反する場合、間接強制の適用自体が困難となる可能性もあるため、個々の事案ごとに慎重な判断が求められます。

まとめ

面会交流の間接強制については、給付の特定性と子どもの年齢・意思という2つの重要な判断要素があります。

給付の特定性に関しては、面会交流の日時、頻度、時間の長さ、子どもの引渡方法等について、できる限り具体的な定めがなされていることが必要です。特に、引渡場所などを「話し合いで決める」とする場合でも、「話し合いがまとまらない時は○○」という予備的な定めがなければ、給付が特定されていると判断されません。

そして、子どもの年齢や意思については、特に15歳以上の子どもの意思が重要視される傾向にあります。

面会交流の取決めをする際には、将来の執行の可能性も見据えて、これらの点を具体的に決めておくことが重要です。面会交流をめぐる紛争では、このような法的な判断基準を理解した上で、子どもの福祉を最優先に考えながら、適切な対応を検討することが大切です。

面会交流に関するトラブルや、監護親による面会交流拒否、または間接強制の適用判断にお悩みの方は、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。初回相談料は無料になっておりますので、お気軽に当事務所までご相談ください。

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