再婚・養子縁組による養育費減額のポイントと計算方法

以前のコラムでは、養育費の減額事由について触れました。その中で、義務者(養育費を支払う側)の再婚や、再婚相手との間の子どもの誕生などが、減額の理由になり得ることをお伝えしました。

今回は、再婚を理由とした養育費の減額後の金額の求め方を実際の例を参考にご紹介します。

はじめに

以前のコラムでもご紹介しましたが、再婚による養育費減額の請求には注意が必要です。なぜなら、以下の場合は減額が認められないとした裁判例があるからです。

  • 離婚から間もなく再婚した場合
  • 連れ子を養子したことで扶養義務者が増えた場合
  • 養育費の合意時点で、再婚相手と交際し、再婚を予定していたと推認できる場合

これらの状況では、減額請求が認められない可能性が高いので、ご留意ください。

事案の概要

依頼者には元妻との間に子ども(15歳未満)おり、その子どもは元妻が監護し、依頼者は養育費として毎月6万円を支払っていました。

その後、依頼者は再婚し、新しい妻の連れ子(15歳未満)と養子縁組を行いました。依頼者の妻は専業主婦として生活しています。

このような状況の変化により、依頼者の扶養する家族の人数が増加しました。経済的な負担が増大したため、依頼者は元妻に支払っている養育費の金額を減額できないかと相談にいらっしゃいました。

算定表を利用した養育費の計算方法

基本的な算定表を利用した計算方法は、『給与以外の収入がある場合の養育費・婚姻費用は?【第1回:概算方法と判例】』をご覧ください。

まずは、どの算定表を使うかを考えます。この際、依頼者には再婚相手である妻に対する扶養義務も発生します。そして、算定表では、再婚相手は0歳~14歳の子と置き換えて見ることができます(「義務者と同居している再婚相手(成人)の生活費の指数は,子(0歳~14歳)の指数とほぼ同じとなる」・2019年12月、家庭裁判所作成の『養育費・婚姻費用算定表についての解説』より)。

そのため、今回の場合は、「(表6)養育費・子3人表(第1子,第2子及び第3子0~14歳)」を使うことになります。

結果、依頼者が負担するべき養育費(扶養費用)の合計は10万円~12万円の範囲となり、範囲の下方に位置しているため、約10万円となります。そして、元妻との子ども、妻、養子縁組をした妻の連れ子の生活費の指数は同じと考えられるため、3人で分割し、依頼者が元妻との子どもに対して、支払うべき養育費は約3万3000円と算出できます。

算定式を利用した養育費の計算方法

扶養する配偶者がいても算定表で養育費を求める方法を紹介しましたが、算定表は子どもが3人までのものしかありません。

実は、話をうかがったところ、依頼者と妻の間に子どもがもうすぐ生まれる予定であることが分かりました。

そのため、算定表ではなく算定式を用いて支払うべき養育費を求めることになりました。

算定式で求める場合は、収入以外に「生活費の指数」と「基礎収入割合」が必要になります。

生活費の指数と基礎収入割合

生活費の指数については、裁判所の「研究報告の概要」にも書かれているとおり、子の生活費の指数は、0歳~14歳が62、15歳以上が85です。そして、再婚相手である妻の生活費の指数は先ほど説明したとおり、子(0歳~14歳)の指数とほぼ同じのため、62になります(※1)。

そして、子の生活指数の値は、「親を100とした場合の子に充てられるべき生活費の割合で,統計数値等から標準化したもの」(『養育費・婚姻費用算定表について』より)のため、親である依頼者の生活費の指数は100になります。

基礎収入割合については、司法研究所編「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究(2019年12月23日発行)」等の専門書に基礎収入割合表として掲載されています。この基礎収入割合表を元に、基礎収入シミュレーターを作成しましたので、こちらで基礎収入割合と基礎収入を求めることができます。

※1
再婚相手が自己の収入で生活費を賄える場合は、0になります。
また、子(0歳~14歳)の生活費の指数を62、子(15歳以上)の生活費の指数を85とした根拠を参照し、求めた再婚相手の生活費の指数は59ですが、簡易の算定という点を優先する選択もあるから調停実務では、再婚相手の生活費の指数を62とするのが主流になっています(松本哲泓(2021).『即解330問婚姻費用・養育費の算定実務』.新日本法規出版.より)。

算定式

養育費を計算する式は次のようになります。

一文字分右寄せされた分数のような数式
義務者の基礎収入 × 子供の生活指数の合計 義務者世帯の生活指数の合計 × 義務者の基礎収入 義務者と権利者の基礎収入の合計

1つずつ確認していきましょう。

【義務者の基礎収入】
義務者は養育費を支払う人のことなので、今回の場合は依頼者になります。そして、依頼者の給与収入は650万円なので、基礎収入シミュレーターで計算して、依頼者の基礎収入は266万5000円と算出できます。

【子どもの生活費指数の合計】
今回の場合は、養育費の支払対象である、元妻が監護している実子の生活費の指数となり、年齢は15歳未満のため、62になります。

【義務者と扶養家族の生活費指数の合計】
義務者(親である依頼者)の生活費指数は100になります。
扶養家族は、元妻との子ども、妻、養子縁組をした妻の連れ子、新たに生まれる妻との子の4人で、4人とも生活費指数は62になります。
よって、義務者と扶養家族の生活費指数の合計は348(100+62+62+62+62)になります。

【義務者と権利者の基礎収入の合計】
権利者は養育費を受け取る人のことなので、今回の場合は依頼者の元妻になります。義務者の基礎収入と同じように基礎収入シミュレーターで計算すると、権利者の基礎収入は126万円となります。

そのため、合計は392万5000円となります。

各項目に値を代入すると

一文字分右寄せされた分数のような数式
266万5000円 × 62 348 × 266万5000円 392万5000円

となり、計算結果は32万2379円となります。この計算結果は年額なので12で割ることで、依頼者が元妻との子どもに対して、支払うべき養育費は約2万7000円と算出できます。

まとめ

再婚や養子縁組による養育費の減額は、家族構成の変化に伴う重要な検討事項です。本コラムでは、算定表や算定式を用いた具体的な計算方法を紹介しました。再婚相手や新たな子どもの存在を考慮し、適切な養育費の見直しが可能です。ただし、減額が認められない場合もあるため、個々の状況に応じた慎重な判断が必要です。養育費の見直しでお困りの方は、初回相談料は無料になっておりますのでお気軽に当事務所までご相談ください。

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