【ゼロから学ぶ財産分与】基本編 ~財産分与とは~

財産分与とは、離婚の際に、財産を分配することをいいます。

いざ、財産分与をするとなると、どの財産をどのように分配するのか
想像以上に複雑で、争いに発展することもあります。

今回から数回に分けて財産分与について解説していきます。
まずは、財産分与の基礎の基礎から学んでいきましょう。

財産分与の種類

財産分与には、「清算的財産分与」「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」の3つがあり、
最も一般的なものが「清算的財産分与」になります。

  • 清算的財産分与
    婚姻期間中に夫婦で協力して形成した財産を清算するためのもの
  • 扶養的財産分与
    離婚後の経済的弱者を扶養するためのもの
    (病気や専業主婦であったため、離婚後すぐに収入を得ることができないなど)
  • 慰謝料的財産分与
    離婚の原因を作った有責配偶者から他方への慰謝料として支払うためのもの

「慰謝料的財産分与」については、財産分与とは別に慰謝料請求をすることが多く
実務上は、あまり利用されていません。
有責配偶者(有責性)については【慰謝料について】のページをご覧ください。

夫婦の財産関係についての法律

まずは、(分配する)財産の所有者について確認していきましょう。
夫婦の財産関係については、民法第760条~第762条に定められています。

【民法第760条】
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を
分担
する。

【民法第761条】
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、
これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、
第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

【民法第762条】
【第1項】
夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、
その特有財産夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
【第2項】
夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

この法律で定められた夫婦の財産関係を法定財産制といい、
夫婦それぞれに単独で財産の所有を認める制度を夫婦別産制といいます。


【補足】夫婦財産契約について

婚姻の届出前に、夫婦間で契約することで法定財産制とは異なる財産関係を結ぶことができますが、
この契約を第三者に主張するためには登記をする必要があります。

【民法第755条】
夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、
その財産関係は、次款に定めるところによる。

(次款は、民法第760条~第762条のことです。)

【民法第756条】
夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記を
しなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

そして、夫婦財産契約の登記件数は、【政府統計】によると、
平成21年~平成30年の10年間で123件しかありません。(年平均12.3件
平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況】によると
婚姻件数は58万6438組ですので、夫婦財産契約をしている夫婦は
全体の約0.002%しかおりませんので、以降の解説は、基本的に法定財産制の
財産分与について解説していきます。


 

専業主婦(主夫)の配偶者の収入は共有財産になるのか?

上図のように、夫は会社に勤務し収入を得ており、妻が専業主婦の場合、
夫が得た収入は「特有財産」「共有財産」のどちらになるのかを考えてみましょう。

【民法第762条第1項】によると、
「婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする。」とあります。
これを見ると、給料は、夫が働いて得た(自己の名で得た)財産なので、
取得した時点では「収入は夫の特有財産になる」と考えることができます。

しかし、これでは妻に不平等が生じてしまいます。そのため、後述する【民法第768条】で
財産分与の請求を認めることで不平等とならないようにしています(※1)。

 

※1
この考え方については【最高裁判所 昭和36年9月6日】の判決が参考になります。


【概要】

【判決】

上告棄却 → 憲法に違反するものといえない。

【判決文】(一部)

民法七六二条一項の規定をみると、夫婦の一方が婚姻中の自己の名で
得た財産はその特有財産とすると定められ、この規定は夫と妻の双方に
平等に適用されるものであるばかりでなく、所論のいうように夫婦は
一心同体であり一の協力体であつて、配偶者の一方の財産取得に対しては
他方が常に協力寄与するものであるとしても、民法には、別に財産分与請求権
相続権ないし扶養請求権等の権利が規定されており、右夫婦相互の協力、
寄与に対しては、これらの権利を行使することにより、結局において
夫婦間に実質上の不平等が生じないよう立法上の配慮がなされている
ということができる。


 

財産分与についての法律

先ほど、不平等とならないように財産分与の請求を認めていると解説しましたが、
具体的にどのように定められているのか確認してみましょう。

【民法第768条】
【第1項】
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる
【第2項】
前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は
協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を
請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
【第3項】
前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額
その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を
定める。

このように、具体的な金額額(割合)や分与方法までは定められていません
ですので、お互いが納得できるように協議をして決める必要があります。

ただし、清算的財産分与の基本的な考え方に【2分の1ルール】というものがあります。
協議をする際にも重要となりますので知っておきましょう。

清算的財産分与の基本的な考え方【2分の1ルール】

2分の1ルールとは、財産を形成した寄与度(貢献度)によほど大きな差が無い限り、
財産の分与額の割合(寄与度)を2分の1にするという考え方で、
特に一方が専業主婦(主夫)の場合に用いられます。

この専業主婦(主夫)の寄与度については、「4分の1」や「3分の1」とする時代も
あったようですが、社会の変化価値観の多様化に応じて、基準が変化していきました。
これのように、社会の変化や価値観の多様化に応じて、基準が変化するのは
家事事件(家庭内の紛争などの家庭に関する事件)の特徴でもあります。

財産の分与について、協議が調わなければ裁判所に判断をゆだねることになり、
裁判所も、この【2分の1ルール】を基準として判断をしています。

まとめ

以上が財産分与についての基本的な部分になります。
次回以降は、さらに詳しい内容や財産分与の割合(寄与度)が
2分の1ではない場合などを解説していきます。

財産分与は現金のように単純に分割することができるものだけでなく、
不動産や家具など簡単には分割できないものも含まれていたりするため
想像よりも話し合いで解決することが難しくなっています。

弁護士に相談することで、話し合いを円滑に進めることができたり、財産分与の
割合(寄与度)について主張し、より多くの財産分与を得ることができる場合もあります
当事務所では初回相談料を無料とさせていただいていますので、お気軽にご相談ください。

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